院内感染防止を考える

『医師ゼンメルワイスの悲劇』より
外科手術が近代手術療法へと成長することが出来たのは、感染防御の原理と麻酔法によると言われています。
この「感染防御の原理」を発見したのがDrゼンメルワイスでした。
彼がウィ―ン大学の産科医になった19世紀初めのヨーロッパでは、産褥熱により産後の母親たちの命が数多く奪われていました。ゼンメルワイスは、若い母親たちの命をなんとかして救いたいと、産褥熱の原因解明を決意したのです。苦難のすえ彼が発見した事実は、自分たち医師の死体解剖で汚れた手が産褥熱発症の最大の原因であることでした。当時は診療時に手洗いや消毒をする習慣がまったくなかったのです。彼は深い自責の念にとらわれましたが、医師たちの手に付いた病毒を取り除く方法を確立することが自分の使命であると決意し、再び研究へと邁進し、ついに手指を石鹸で洗った後ブラッシングを塩化石灰水(塩素水)で行なうという合理的な手指の消毒方法を考案しました。この方法によってウィーン大学の産科では、1846年に459人もの死者を出していたのが、二年後には45人までに激減したのです。
しかし彼の行動は医学界の権威たちの反感をかい、大学をおわれてしまいます。Drゼンメルワイスはその後も彼の方法の普及の為に一生を捧げましたが、報われる事無く1865年にこの世を去りました。彼の方法が医学界に受け入れられたのは、1879年コッホによって病原菌の存在が立証された以降のことになります……。産褥熱によって多くの人命を奪っていたのは、まさにその人々を救う立場の医療従事者の手でした。この医療の「悲劇」の克服は、ゼンメルワイスによって手指の洗浄・消毒から始まりました。現在ではかなりの対処がなされていますが、その中でもまた新たな「悲劇」が始まっているのです。ウィルス性肝炎・MRSA・エイズウィルス等による恐ろしい「悲劇」が社会問題になるほど蔓延しています。院内感染に対する知識を、もっと一般に広め、より一層の予防対策を確立していきたいものです。

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